画像診断機器の発達によって、脳血管障害の診断が容易となり、治療についても定型化されつつあります。しかし、パーキンソン病やALSに代表される一般的な検査で診断がつかない神経筋疾患については、今なお病歴と所見が診断に際して非常に重要な位置を占めています。私たちは医療の基本ともいうべき「病歴と所見」を大事にしながら、画像検査や血液・髄液検査のみならず、生理学的検査・病理学的検査を駆使して診断し、標準的な治療を行うことを心がけています。
従来、当科の入院・外来患者は脳血管障害が大部分を占めていましたが、この3年でパーキンソン病・多発性硬化症・重症筋無力症などが増加したために、標準的な臨床神経学の研修が可能となりつつあります。また、外来診療においても、一般診察以外に、物忘れ外来・頭痛外来・禁煙外来・ボツリヌス治療外来を専門外来として開設しているので、それぞれについての専門的な研修を行うことが可能です。しかし、単一施設で研修を継続することによって診療に偏りが生じることは否めず、幅広い人間関係を構築することは困難です。よって、当科では離島僻地研修以外に他施設における短期研修を組み込んでおり、既に1名が北野病院神経内科における6ヶ月の研修を修了しています。
最後に、論文を執筆する医師の減少を嘆く声を耳にはます。教科書やガイドラインは先人が残した膨大な記録をもとにして作成されたものであり、これらにのっとった診療を行って日々の生活の糧を得ている以上、私たちにもまた、あとに続く医師に自らの経験したこと・考えたことを伝える義務があります。学会での口頭発表も重要ですが、所詮はその場限りのものにすぎません。よって、和文・英文を問わず、論文を執筆・発表することを奨励し、可能な限りの支援を行っています。ちなみに昨今、当科から発表された6本の論文のうち、4本がレジデントによって執筆されたものです。